メモ

http://d.hatena.ne.jp/kawango/20090604/1244146170

サポート電話がつながらないという販売店からの苦情をきいた社長が僕の机まで飛んできて怒鳴りつけられた。4人全員で電話を受けろ、サポート時間を延長して残業してでもできるかぎりの電話を捌け、それが客に対する誠意だ、と叱責された。そんなに激怒した社長を見るのは初めてだった。


いや、ぶっちゃけそこまでやっても無駄ですからやりませんと僕は初めて社長と喧嘩をした。強引に社長の指示を拒否して、ぼくがやったのはマニュアルのつくりなおしだった。サポートを1回線にしたことで浮いたスタッフひとりといっしょにわかりやすくてカラフルなマニュアルを大急ぎでつくりなおして登録ユーザ全員に発送した。また、それだけでは不十分だと考えて、当時、でたばかりのショックウェーブをつかって、音声と写真でモデムの接続と設定をナビゲーションしてくれるマルチメディアマニュアルをつくってユーザへ無料配布するCDROMに同梱した。


結果、どうなったかというと、配布して直後に大量の感謝の手紙がサポートセンターに届き始めた。買ったあとにもサポートされるなんて思ってもみなかった。パソコンを買って、こんなに親切な対応をしてもらったのは、はじめてだ。自分みたいな初心者にも本当にわかりやすいマニュアルでありがとうございます。など。


そしてサポートにかかってくる電話も急激に減り、たまにかかってきた電話も、みんな恐縮した電話ばかりになった。こんなに丁寧なマニュアルがついているのに、つかえないのは自分が悪いんだと思っているからだ。

  • エピソードとしてとても秀逸。
  • 丁寧にやってるとサポートへの電話が逆に恐縮したものになる、というのもわかる。
  • 正直顧客対応的なことが面倒でテンションあがらない僕にとって、このエピソードから導かれる結論にも非常に興味がある。

われわれは、サービス・商品を設計する場合に、漠然とした空想の中のお客さん像をつくりがちになる。よくよく考えると、自分で現実にいるとはイメージできないお客さんは、やっぱり現実世界にも実在しないことがほとんどだ。でも、まわりから教わったビジネスのノウハウ、常識・マナーといったものを無意識のうちにどんどんあてはめると、気がついたら、架空のお客様像相手にマーケティングをしてしまっている。現実にいそうなお客さんを想像し、次にそのお客さんがどのぐらいの割合でいるのかを考えることがとても重要になる。


そういったことをできるためにベースとなるスキルは人間に関する知識を持つことだ。多くのマーケティングもどきをやるひとはユーザを想像するときに、自分のなけなしの知識と上司からの指示・同僚からのアドバイスをよせあつめた架空のユーザをつくるか、自分の趣味をあてはめるか、どちらかのパターンしかできない。どういう育ち方、経験をしてきたひとがどういうことを考えて、どういう気持ちになるか、それをたくさんのパターンで想像できないといけない。でも、ほとんどのひとって他人の気持ち、行動っていうものをあまり真剣に考えない。

  • 自分は下から上まで、わりと広範な人と付き合いがあって、かつ人の気持ちへの想像力が比較的はたらく方だと思っている
  • ただ現実にはいない人間をイメージしてマーケティングをしてしまう、という状態に自分もよく陥る
  • なんでだろう、と考えてみたら、webやiphoneのユーザー層に関してはあまり付き合いがないからだ、とわかった。家にネットがない、使わない、という人間が周りに多い