メモ

http://blog.goo.ne.jp/mit_sloan/e/77331154ebfee09e49e81e3d2d843cd0

こんなちょっとしたCMで、これだけグルーポンへの不快感が巻き起こるのは、
それ以前から、グルーポンに対する問題意識を持つ人々が多かったからだ。

1)は米国では、州ごとにクーポン券の発行に関する法律が違っていて、有効期間が短いクーポンは違法だったりなどで、グルーポンが民間や州に訴えられてるなど。
カリフォルニア(→記事はこちら)やシカゴなど、係争中のものがいくつかある。


また、今週に米国で起こった「グルーポンのクーポンより、店の割引の方が安かった。グルーポンは差額分を支払え」なんて二重価格問題も、(→記事はこちら)最初からチェックしていれば生じなかった問題だろう。


これらの問題は、グルーポン自体が急激に成長し、組織的にガバナンスが利いていないために起こっている可能性が高い。
開始たった2年でサービスを22カ国170都市に広げ、世界で2000人(2010年8月時点)体制に拡大。
これだけの急成長では、どうしてもチェックが甘くなる、新興ベンチャーにはよくあるケースだ。

しかし本当に問題なのは2)のビジネスモデルそのものの問題だ。
これは、仮にグルーポンの体制が落ち着いたとしても、起こるのが避けられない。


こちらのサイトに店側から見た問題点が書かれているが、それぞれ客側から見た問題にもつながる。
Top 10 Business Disadvantages To Advertise on Groupon - Daily Deal Site
まとめると次の4点だ。


1. 店にとってコストがかかりすぎる
通常米国のグルーポンは、店に50%オフのクーポンを発行することを求める。
その上、通常売価の2-3割の手数料を求める。
結果として、店は同じ製品・サービスを提供しても、グルーポンなしで販売した場合の25%の収入しか入らない。


その結果、店は使う食材の品質を落とし、それが顧客の不評を買う、という悪循環に陥る。
個人ブログなどを読むと、グルーポンのクーポンをレストランに持っていたところ、店にはぞんざいな扱われ方をし、質の悪い食材を使った食事を出されて憤慨した、というケースが多々出てくる。(→ 個人ブログの例)
グルーポンより店の問題とも言えるが、マージン2割程度でなりたってる中小店舗から、7割も取るのはやりすぎ。
結局、店も損するし、客も嬉しくない、グルーポンだけ得をするという一得二両損になるのだ。


2. 価格破壊により店のブランドイメージが破壊される
価格を大幅に落とすことで、品質を落とさなくても、そもそも店のイメージは破壊される。
化粧品や薬が半額で売られていたら、効き目を疑うのと同じだ。
なじみの客から見れば、店への信用を失ってしまうだろう。


以上二つは、グルーポンが「50%割引」なんて大げさな割引価格をやめ、
「一品サービス」とか「1割引」くらいのオファーにとどめれば、徐々に解決するだろう。
ただし、そうするとグルーポン自身がその辺のクーポンサービスと差別化がしにくくなるのが次の問題。


3. 間違ったセグメントの顧客を呼び寄せる
そもそも割引クーポンにつられて遠くから来る顧客が、本当に店が望む顧客なのかということ。
グルーポンがターゲットとしてるような中小の店舗は、地元のお客さんに長いことリピーターになってもらうことで成り立つ商売だ。
クーポンにつられて違う町から来た一見客が店を占拠し、地元の客が離れていき、一見客もすぐに来なくなるという逆効果につながりかねない。
地元客から見ても、なじみの店に行きにくくなる。


グルーポンがオンラインネットワークを活用して割引クーポンを配るモデルを続ける限り、この問題は続くだろうから、本質的な問題だ。


4. 短期間にものすごい数の客にジャックされる
これは、グルーポンソーシャルネットワーク全体に、短期間限定のクーポン情報を一気に投下することで起きる問題だ。
その結果、パパママでやってる地域の小さな美容院から発行されるクーポンが1週間で5000枚とかに達し、予約が殺到する。
一日せいぜい20名程度、一週間で140名程度しかこなせない美容院で5000人はさすがに無理だ。
レストランでも、その一週間やってくる全ての客がグルーポン客などとなりかねない。
収益に大きなダメージを与えるだろう。
そして彼らはクーポン期間が過ぎると、田畑を荒らしたイナゴのように去っていくのだ。
地元客もいったんは寄り付かなくなるだろう。店と客の信頼関係にひびが入るというものだ。


これは個人の居住地区などをより特定してじわじわ配信、クーポン発行枚数の制限、クーポンの割引率とともに期間の長期化を測れば、通常のクーポンと同様、問題はなくなるだろう。
ただし、そうするとグルーポン自身の競合差別化が難しくなる。


以上、まとめると米国のグルーポン問題は、次のことに集約される。


グルーポンが他のクーポン業者と差別化を図るために必要な、クーポンの大幅割引や、SNSへの大量投下が、ターゲットである中小店舗にとって最も重要な、店と顧客の長期的な信頼関係を破壊している


グルーポンがそれでも店に活用されるのはなぜか、というと、クーポン客とはいえあれだけ沢山の客が来るという反応が分かりやすく、広告効果を実感できるからだ。
また広告費をキャッシュで出せない中小店舗が、先に上がる収益から払えるというのも魅力だと思う。
それがグルーポンの他のサービスとの大きな差別化要素である。
しかし、それは店と客には結果として不利益となる、諸刃の剣なのだ。


仮に、このような店と客にとって不利益となる要素でしか、グルーポンが競合差別化できないのだとしたら、ビジネスモデルそのものが問題ではなかろうか。
瞬間的に店と客にダメージを与えながら、とにかくレバレッジかけて急成長し、デファクトになるのが鍵だと思っているならもっと問題だ。


SNSを活用してクーポンを配信するとか、アイディアそのものは面白いと思っている。
店と客とグルーポン三者が得する三方得に持っていける、持続可能なビジネスモデルに柔軟に変更して行って欲しい。