メモ

http://www.advertimes.com/20101211/article3029/

広告にかかわらず、クリエーティブな職種につく日本人が海外に挑戦しやすいと感じるのは、この仕事の本質が純粋にアイデア勝負なところにあるからです。だから理想論っぽくも聞こえますが、僕は新しかったり面白かったりするアイデアを生み出せさえすれば、世界のどの国でだって生きていけると思っています。

世界のどの国の人でも、子供でも大人でも、誰が触れても楽しいと思えるようなアイデアを作りたいと常日頃思っています。そもそも、ある特定の言語や、文化のコンテクストや、時代のトレンドやらに頼った表現よりも、全人類共通の琴線に触れるような表現を作りたい。その方が必然的に強くて大きな表現になると思うのです。

僕は日本にいようとヨーロッパにいようとアメリカにいようと、その土地の文化に関係なく楽しんでもらえるアイデアを思いつく自信があります。多分マーケットを細かくセグメンテーションしていくことには限界があって、というか僕がそこまで器用じゃなくって、だったらいっそもっと大きな「人類」を相手にアイデアを考えた方がいいじゃないか、と思っている節があります。


もう少し現実的な話をすると、ヨーロッパのように複数の国や文化が入り交じったマーケットを相手にする場合は、こういった考え方はとても大切になってきます。ロンドンで流行っているものとウクライナで流行っているものなんて、天と地ほど離れていたりするので。

言葉に頼らない、絵で見たらわかるようなシンプルな表現を僕が好んでいたのも、海外でやってきやすかった一因なのかなと思います。僕がアイデアを提案するときは、絵を一枚書いてみせれば誰でもわかるような、シンプルだけど強いモノにしようといつも心がけています。それはもちろん、広告の受け手にとってスピードの早い表現になるからそうしているのですが、同時にその手前での社内のコミュニケーションのスピードもとても早くなります。特に海外で仕事をする際に、慣れない言語で細かく言葉で説明しなくても伝わるアイデアというのはとっても有効だったりします。


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具体的に僕がどのくらいシンプルなプレゼンをしているかというと、大体A5(A5を作るのが面倒な場合はA4)の紙一枚に1アイデア(絵と簡単な説明文)を書いてミーティングに持っていきます。1枚で1キャンペーンの全体像がつかめるようなくらいシンプルにアイデアを削ぎ落として説明する。そもそもアイデア(特に広告のアイデア)はそのくらいシンプルじゃなくちゃ必要な数の人に届かないと思っています。

このとき、日本での経験ですごく役立っているのが絵やコンテを書く技術です。これは博報堂時代にCMプランナーをやっていてしこたま鍛えられた賜物なわけですが、こっちのクリエーティブはこれが巧(うま)くできる人が実はあまりいない。僕は頭の中に完成した映像が浮かばないとアイデアをプレゼンできない性質なのですが、どうもこっちのクリエーティブはコピーライター&アートディレクターのチームという分業制のせいか、そういう風な思考をしていないようなのです。だからこの映像を絵に起こすスキルは、すごく便利で重宝しています。さらには日本の15秒CM文化というのも、実はアイデアを要約するという意味ではすごくいい訓練になっていたんだなぁとも感じてます。

そんな風にシンプルにまとめたつもりの渾身(こんしん)のアイデアでも、なかなかわかってもらえない場合もあります。それはきっと日本でもどこでも同じなんじゃないでしょうか。そんなとき僕は、自分で映像やらコンテンツのプロトタイプを作ってしまうようにしています。古くはJINROのダンスも映像を撮影してチームにプレゼンしたし、昨年のアックスのキャンペーンは当時在籍していたBBHの受付嬢に頼み込んでビデオを撮ってプレゼンしました。先日も、ワイデンのビルの屋上からマシュマロ落として、口でキャッチしながらアイデアを説明したりしてます。


あきらめが悪いとも言えますが、僕はアイデアを考えるプロセスも、アイデアを説明するプロセスも、アウトプットと同様に重要なことだと考えています。自分でわかってもらう努力とそのためのプロセス自体にもアイデアを持たないといけない。