メモ

人脈の価値について、昔、聞いた話
http://d.hatena.ne.jp/kawango/20090707/1246977797

”業界”のひとって、会話の半分以上が、自分はだれそれと仲がいい、とかこのまえ一緒にめしをくったとか、飲みにいって朝まで大変だったとか、こんど会うとか、なんですね。一般社会ではそういうのは嫌われることが多いのでめったに会わないですが、”業界”だとそういうひとばっかりです。むしろそうじゃない人のほうが珍しい。どういう力学がはたらいたら、こういうひとたちの存在があたりまえな社会になるのだろうって、最初のうち不思議だったのですが、そのうち気づきました。


それは”業界”のひとって、個人の看板で商売しているからです。ふつうのビジネス社会では偉い人も、結局のところは会社の看板で商売しています。”業界”ではたとえサラリーマンであっても仕事は人とのつながりがすべてだから、自分という看板をいかによく見せるかということで勝負しているのです。自分の人脈をアピールするのは自己顕示欲なんかじゃなくて、真剣勝負なわけです。そのことがわかって、ますますこの世界が好きになりました。会社の規模と肩書きだけで相手を値踏みする世界にくらべてなんて公平なことか。

2ちゃんねるとかを見ていると芸能界とか音楽業界とかは恐ろしい権力をもっていて、あちこちに影響力をおよぼすちょっとブラックなところだと思われたりしているようです。でも、それはちょっとフェアな見方ではないと思います。彼らは弱者としてゲリラ戦をやっているだけです。圧倒的に強大な敵に対して弱者が権謀術策をめぐらしてなんとか大健闘しているだけにすぎない。エンタメ業界なんて国歌の基幹産業にいれてもらえたことはないし、ずっとカス扱いをされてきました。個人の力を寄せ集めて、ちょっとした力学上の奇跡を起こしてきたのが彼らです。

  • この視点は斬新。

「いざというときに君たちが金を渡して受け取ってくれる人間が何人いるか?それが君たちのもっている人脈の価値だ。だれからでも金を受け取る奴は意味がないからカウントしちゃだめだ。普段はそんなことをしないような奴で、君たちに心を許してくれて、いざというときには金を出したら受け取ってくれる人間が何人いるかが大事なんだ。」


この話を聞いたのはもう何年も前ですが、ちょっと当時の僕にとっては衝撃的で、人間というものをいろいろ考えるきっかけとなりました。自分の欲望じゃなく、相手への好意のしるしとして、人間はお金を受け取ったりするんだ、と思いました。考えてみると、ぼくも好きじゃない人間から飯を奢られたりするのは大変な苦痛なので避けます。

  • この考え方は斬新。何が斬新って、「金を渡して受け取ってくれる」という尺度。「助けてくれる」じゃなく。切り口の斬新さ、ちょっとした違和感がリアルな理解を呼び起こす好例

人間は生存本能にもとづいて行動するのが一番自然ですばらしいと思うんですが、現代社会においては、まず、餓死の心配はないので、生存本能だけでは、生きる目的を失いがちです。自分は本当はどういう人生を生きたいのかと考え始めると、別に哲学者じゃなくても、死にたくはないけど、生きる意味なんて別にないよね、とか気づいてしまいます。


そこで身内です。自分が好きな他人、尊敬している他人のために生きる。


これがなにが素晴らしいかというと、相手が本当は、なにをのぞんでいるかなんて、結構どうでもいいというところです。自分のことだったら、結局、人生なんて意味がないから、努力して生きてもしょうがない、とか考えちゃいますが、他人のことだったら、しょせん他人事ですから、自分さえ、これは相手のためだと決めつけてしまえば、いくらでも頑張れる、一所懸命に生きることができる。


相手も本当は人生に意味がないとか思っているかもしれないですけど、そんなの自分のことじゃないから知ったこっちゃない。相手がせいぜい自分に好意さえもってくれるぐらいでじゅうぶんに納得できて、相手のために頑張れる。

  • 最初のパラグラフ、イマドキの若者がぐるぐる悩んでやっと辿り着きそうなところをさらっと簡潔にいってるところがいい。「人間は生存本能にもとづいて行動するのが一番自然ですばらしい」「現代社会においては、まず、餓死の心配はないので、生存本能だけでは、生きる目的を失いがち」「自分は本当はどういう人生を生きたいのかと考え始めると、別に哲学者じゃなくても、死にたくはないけど、生きる意味なんて別にないよね、とか気づいてしまいます」
  • 人のために生きる、という理由をこういう視点でいってるのは初めて見た。でもすごくわかる。しょせん他人事だから、人生なんて意味がない、とか考えずにがんばれる。なるほど。

ぼくは、世間の常識だったり利害関係から、合理的な判断の結果として自分の行動を決めるのは好きではないです。


それって機械じゃん。ただの社会のパーツじゃんと思ってしまいます。たぶん、ぼくでなくてもいい。アルゴリズムで代替できてしまうと思います。